45年前に書かれた中国に関する本を読んでみると…
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45年前の中国に関する本を見つけました
この前、偶然京都の古本屋さんで、
「新しい中国」管沼不二男・飯島篤 共著 昭和47年発行
という本を見つけた。
なんと45年前に発行されたこの本。当時の値段は¥280。
大学時代、中国の歴史について研究していたこともあり、興味本位から手に取ってみたが、その内容は現代の日本人が中国に対して抱くイメージとは大きく異なっていた。
中国の今昔イメージ
中国。今の日本人からすると、「急激な経済成長」、「公害」、「爆買い」、「マナー・モラルの問題」、「共産党独裁」と言った、マイナスなイメージが続くだろう。
実際、筆者もそのような感情を抱いている。
ただし、45年前の人からすると「中国」のイメージは違ったようだ。
この本の中に、当時の中国・北京の街並みの様子が描写されている。
「緑の中に街がある、といった感じの街路。綺麗に清掃されて、ゴミ一つない美しさ。それになんと空気の澄んですがすがしいことか。公害ということを何一つ感じさせない北京の朝。」
とある。
今のスモッグ注意報が出される中国からは想像できない描写である。
マナーやモラルについても
また、マナー・モラルについても描写があり、
「北京では、市民の足はバスとトロリーバスと自転車である。朝夕のラッシュ時は相当混むが、市民は行儀よく停留所に並んでいて、押し合い、へし合いの風景は見られない。」
ともある。
今の割込み乗車あたりまえ、我先にと先急ぐ中国人からは想像できないのではないだろうか?
なぜこのような本が出版されたのか?
この本を読んでいて終始思うのは、著者の中国絶賛の文章である。
いかに人民が中国が共産党指導の下、合理的かつ幸せな生活を送っているのか、という事が書かれている。
例えば、人民公社の学校の指導方法について述べたのち、
「我が国の教育の現状と対比し、色々考えされられる点が多い。(つまり日本の教育を中国のような教育に見直す必要があるという意味)」
と述べたり、
現在では中国国内でも批判されている、文化大革命についても
「魂に触れる革命」であり、
「プロレタリ文化大革命の意義は、…(省略)…毛沢東思想という、全中国を照らす太陽が一段と光り輝くようになった」
と書かれている。
なぜこのような文章が書かれたのだろうか?
それは1972年という時代に何か意味があるのかもしれない。
当時、毛沢東思想(マオイズム)と呼ばれる政治思想が日本の進歩的文化人に広く受け入れられ、共鳴する者が沢山いた。
また、当時は冷戦時代。
中国は竹のカーテンで閉ざされ、日本にいた人々は中国の情報がほとんど入ってこなかった。文化大革命がいかに破壊的な行為をともなったものかどうかを知る由もなかったのである。
著者は毛沢東に強く影響を受け、また、客観的な当時の中国を知らなかったために、文化大革命を称賛するような文章を書いたのかもしれない。
最後に
この本を通して、中国のイメージが時代によって違うことが分かった。
特に、公害問題やマナー・モラルの問題が今の中国とは違うというのは衝撃的だ。
逆にこの本を今の中国人に読んでもらい、45年前の中国人は今よりもずっと綺麗でマナーのある人々だったんだよ、と気づいてもらいたい。
また、日本側も、昨今の批判的な報道だけでなく、中立的に良い部分、悪い部分を伝えていただきたいと思う。